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2024.07.29

経営事項審査の評点は、総合評定値(P点)と呼ばれます。
P点は、会社の経営規模や経営状況等の5つの審査項目の評点(X₁、X₂、Y、Z、W)をもとに計算して求められます。
そのため、それぞれの審査項目の評点を上げることが、経営事項審査の点数アップにつながります。
以下で、一つ一つの審査項目について評点アップの方法を見ていきましょう。
P点の計算方法について詳しくはこちらをご参照ください。
X点は「経営規模」を評価する審査項目で、完成工事高や自己資本の金額で点数が決まってきます。それぞれ金額が大きいほど点数も高くなります。
ただ「経営規模」は短期的な対策がしにくい項目になりますので、ここでは実行しやすい現実的な方法に絞ってご紹介します。
X点を上げるためには、完成工事高をできるだけ大きく計上することがポイントになってきます。
具体的な選択方法についてはこちらをご参照ください。
経営事項審査では、特定の専門工事の完成工事高を、関連する一式工事または関連する専門工事に合算することができます。
例えば、大工工事の完成工事高が2,000万円あった場合、その2,000万円を建築一式工事の完成工事高に合算して申請できます。
この方法は「合算(積み上げ)」と呼ばれ、これを上手に活用すれば狙った業種で評点アップが狙えます。
ただ、この「合算」ができる業種は限定されており、決められた業種間でのみ合算が可能です。
合算ができる業種についてはこちらをご参照ください。
【重要】合算の注意点
・合算する業種と合算先の業種の両方について、建設業許可が必要となります。
・合算する業種では経営事項審査は受けられなくなります。
この合算をうまく活用すれば、公共工事を積極的に取っていきたい業種に絞って効率よくX点を伸ばす事が出来ます。
「公共工事は1業種に絞って確実に狙っていきたい」というような会社さんであれば、非常に効果的な方法です。ぜひご検討ください。
以上のほかに、「工事進行基準」を採用するという方法を挙げる方もいらっしゃいますが、私はあまり意味がないと考えています。
確かに、工事進行基準を採用すれば、期末の未成工事について当期に完成している分を完成工事高に計上することができます。
しかし逆に、前期から当期にまたがる工事では、前期に完成していた分については前期の完成工事高に計上することになります。
そのため、結果的にあまり違いがない場合も多いです。
また、一時的には評点が上がるかもしれませんが、長い目で見ると効果は疑問です。
現在の経審は、完成工事高よりも利益を重視した制度になっています。
そのため、利益の薄い工事を多く受注するよりも、利益率を高めることが重要になってきます。
Y点は「経営状況」を評価する審査項目で、財務の健全化が評点アップの大きなポイントになってきます。
ただ、多くの項目が「経営判断」に関係するものになりますので、ここでは実行しやすい現実的な方法に絞ってご紹介します。
Y点の中に、受取利息と支払利息の比率で算出される項目があります。
受取利息は多い方が、支払利息は少ない方が点数は高くなります。
ただ決算書を見てみると、雑収入の中に受取利息が混ざってしまっていることが意外と多くあります。
これでは受取利息として正しく計算されず、実態よりも点数が下がってしまいます。
このため、雑収入の内訳書をしっかり確認し、もし雑収入の中に受取利息が入ってしまっていたら、受取利息に振り替えます。
財務諸表の中の損益計算書には、いくつか「○○利益」という項目が出てきます。
「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前純利益」、そして「純利益」です。
一番最後の「純利益」に注目される方が多いと思いますが、経審では「純利益」を直接評価する項目はありません。
経審点に影響してくるのは、「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」の3つの利益になります。
このうちの「売上総利益」は売上から原価を引いたものです。
そのため、原価をなるべく小さくした方が「売上総利益」は大きくなります。
ある経費を原価に入れるのか、一般管理費にするのかは、「純利益」のことだけを考えるならば、どちらに入れても最後の利益は同じなので大した問題ではありません。
しかし、「売上総利益」には違いがでてきます。そして、これは経審点にも影響します。
そのため、原価でないものはなるべく原価から除いた方が良いのです。
これは、「営業利益」、「経常利益」にも同じことが言えます。
入ってくるお金はより上に、出ていくお金はより下に、というのが点数を上げるための鉄則になります。
もちろん、実際の数字を変えることはできないので、原価にあたるものを一般管理費に入れるようなことはできません。
ただ、原価ではないものが原価の中に入ってしまっているケースは意外と多いです。
一度見直してみることをお勧めします。
Z点は会社が持つ「技術力」を評価する項目で、技術職員の数や「元請完成工事高」を点数化します。
在籍している技術者の方がお持ちの資格や実務経験によって加点になる項目です。
そのため、これらをもれなく登録することがZ点を上げるポイントになります。
社内に1級技術者がいる場合、必ずその方に監理技術者講習を受講してもらいましょう。
監理技術者資格者証を持っている1級技術者には1点の上乗せがあり、合計6点の加点になります(資格者証がない1級技術者は5点の加点)。
1日講習を受け、事務手続きをすれば加点がとれる項目ですで、1点ですがとりこぼしのないように注意しましょう。
また、監理技術者証も監理技術者講習も有効期間は5年間ですが、審査基準日(決算日)時点で有効なものを持っている必要があります。
決算が終わって経審の手続きをするときに「切れてる!」と発覚することもしばしば…そうならないために、有効期限の管理をしっかりと行っていきましょう。
1人の技術職員で加点できるのは2業種までとなっています。
例えば、1級建築士のように複数の業種での加点が可能な資格があります。
どの業種の点数を伸ばしたいかをしっかり考えた上で、技術職員の振分けを行いましょう。
長い目で見ると、この方法が最も効果的です。
社員の資格取得を後押しする為に、学習費用や受験費用を会社から補助したり、資格保有者には手当を設けて給与アップを行うなど、社員が積極的に資格取得を目指す環境を作りましょう。
また資格保有者の採用は、Z点をすぐに上げる事ができる方法の一つです(ただし、審査基準日以前に6ヶ月を超える雇用関係が必要です)。
W点はその他の審査項目(社会性等)です。
下記の8つの審査項目によって点数化されます。
社会保険には、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の3つがあります。
未加入の場合にはそれぞれ40点の減点になってしまいます。
そのため、この3つへの加入は必須になります。
下記の3つの制度に加入している場合には、それぞれ15点の加点があります。
これら全てに加入していた場合には、15点×3=45点の加点になりますので、大幅なW点アップが狙えます。
①は現場で働く職人さんを被共済者として加入する事が可能な退職金制度で、多くの建設事業者が加入している制度です。
※詳しくは「建設業退職金共済制度について(外部ページ)」を参照下さい
②のオススメは退職一時金制度のひとつ「中退共(中小企業退職金共済事業)」への加入です。
こちらも①の建退共と同じ退職金制度ですが、1人の従業員が両方に加入する事は出来ません。
そのため、現場で働く方は①の建退共、事務職員さんは②の中退共に加入するなどすれば、両方の加点が狙えます。
※詳しくは「中小企業退職金共済事業について(外部ページ)」を参照下さい。
③の法定外労働災害補償制度は、民間の損害保険によって労災の上乗せをする場合でも条件を満たせば認められます。
保険会社の方が詳しいので、検討される方は一度保険屋さんに相談されると良いと思います。
W点の加点項目に「防災協定の締結」があり、締結している場合は20点の加点があります。
これは非常に大きいのでぜひ狙っていきたいですが、自治体と単独で防災協定の締結出来るのは、大企業に限られます。
しかし中小企業でもこの防災協定の加点要件を満たす方法があります。
それは関連団体や組合への加入です。
事業者が所属する団体が防災協定を締結している場合でも、この防災協定の締結が認められるケースがありますので、防災協定を締結している関連団体を調べて加入を検討するのもひとつです。
※防災活動への貢献の状況は自治体によって考え方や扱いが異なりますので、必ず申請先の手引きを確認して下さい。
W点には「建設業の経理に関する状況」という審査項目があり、公認会計者や税理士、建設業経理士の資格保有者がいる事業者は加点があります。
この項目での加点を狙う為に、建設業経理士2級の取得をオススメします。
公認会計士や税理士のような超難関資格を従業員に取得してもらうのはあまり現実的ではありませんが、この建設業経理士2級であれば、例えば商業高校を出ていて簿記の知識を少し持っているような方であれば、数カ月勉強すれば十分取れる難易度です。
また簿記の知識がない方でも、1年程度勉強すれば十分合格を狙える難易度だと思います(合格率も30~50%と資格試験にしては高い部類です)。
加点される点数は会社の規模によって異なるので一概には言えませんが、例えば年間平均完成工事高が1億円未満の会社であれば、建設業経理士2級が1名いるだけで10点、1億円以上10億円未満の場合でも6点加点されますので、中小企業であればそれなりの評点アップを狙えます。